渡辺公貴(同志社大学 生命医科学部 教授)
岩渕泰晶(宇宙航空研究開発機構(JAXA)安全・信頼性推進部 システム安全・軌道利用安全推進ユニット主任)
小原克博(神学部教授、本プロジェクト代表)
石川正道(同志社大学 高等研究教育院 特別客員教授)
西山啓一(学校法人 同志社・常務理事)
SDGsの諸課題を長期的な視点で解決していくために、宇宙研究・宇宙開発との関係を欠くことはできない。本シンポジウムではその理由を明らかにしていく。新島襄は「大学は智識の養成場なり、宇宙原理の講究所なり」(「私立大学設立の旨意、京都府民に告ぐ」1888年)と語った。新島が大学の理想像を語る際、「深山大沢」のみならず「宇宙」もまた重要なキーワードであった。本シンポジウムでは、新島のコスモロジー(宇宙観)を現代的・未来的な課題の中で受けとめ、ネクスト「深山大沢」として再構築していく。そのような作業を通じて、宇宙開発とSDGsを同時に視野に入れることできるユニークな取り組みを同志社大学から発信していきたいと考えている。
本シンポジウムの流れは以下のようになる。最初に、「SORA-Q」の開発に長年関わってこられた渡辺公貴氏(同志社大学生命医科学部教授)に、実験用のSORA-Qを手に取りながら、その開発のエピソードと共に宇宙への思いを語っていただく。「SORA-Q」は、株式会社タカラトミー、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ソニーグループ株式会社、同志社大学が共同開発した超小型の変形型月面ロボットであり、本年中にJAXAの小型月着陸実証機SLIM(スリム)に搭載されて月へ向かう予定である。「SORA-Q」は月面着陸後、瞬時に球体が左右に拡張変形し、月面を走行しながら、搭載された前後2つのカメラで撮影した画像を中継機を経由して地球に送信するミッションを担っている。
次に、JAXAにおいて、宇宙開発とSDGsの関係に取り組んでこられた岩渕泰晶氏(JAXA安全・信頼性推進部 システム安全・軌道利用安全推進ユニット主任)に、両者の密接な関係を語っていただく。宇宙開発や人類の月面居住計画はJAXAのミッションの重要部分を占めている。宇宙で人間が活動することは、まだ多くの困難を伴うが、その可能性を模索していくことは、同時に地上における人間の可能性を考えていくことにもつながることを参加者と共に考えていきたい。
二人の講演に続き、国際宇宙ステーションISSの開発にかかわった経験をもつ石川正道氏(同志社大学 高等研究教育院 特別客員教授)と、学校法人同志社における中高生を対象に宇宙関連の課外授業を開催し、宇宙に強い関心を抱く生徒を育成してきた西山啓一氏(学校法人 同志社・常務理事)にコメントをいただいた上で、登壇者の間でパネルディスカッションを行う。その後、フロアーとの質疑応答を行う。シンポジウム終了後には、来場者に「SORA-Q」に直接触れていただく機会を設ける予定である。