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ネクスト「深山大沢」プロジェクト──良心の概念拡張と新たな実践

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【お知らせ】

2022年11月22日、公開シンポジウム「SDGs ネクスト「深山大沢」プロジェクト ── ミツバチから宇宙まで」


本プロジェクトは「”諸君ヨ、人一人ハ大切ナリ” 同志社大学SDGs研究」プロジェクト(2022年度)に採択された研究課題です(→ 採択課題一覧)。

 

【研究メンバー】

小原克博(神学部・教授)、後藤琢也(理工学部・教授)、稲岡恭二(理工学部・教授)、林田明(理工学部・教授)、石川正道(高等研究教育院・客員教授)、廣安知之(生命医科学部・教授)、野口範子(生命医科学部・教授)、櫻井芳雄(脳科学研究科・教授)、元山純(脳科学研究科・教授)、武藤崇(心理学部・教授)、金津和美(文学部・教授)、八木匡(経済学部・教授)、和田喜彦(経済学部・教授)、飯塚まり(ビジネス研究科・教授)、服部篤子(政策学部・教授)、桝太一(ハリス理化学研究所・助教)

 

【目的・概要】

 本研究プロジェクトは、同志社大学に潜在する重要理念を現代的文脈の中で再構築し、SDGsの課題解決のために他に例のないユニークな視点と方法を提示することを目的とする。
 新島襄は大学の理想像を「深山大沢」に求めた。「我が校をして深山大沢のごとくになし、小魚も生長せしめ、大魚も自在に発育せしめ」(「横田安止宛」手紙、1889年)、「深山大沢龍蛇ヲ生スト申シテ、之〔大学〕ヲ深山大沢トナシ、器量ノ太卜キ、志操ノ高キ、目的ノ大ナル人物ヲ養成致シ」(「大学設立主旨」、1889年)は、その代表的なものである。前者の「小魚も・・・、大魚も」は「諸君ヨ、人一人ハ大切ナリ」を強く連想させる。後者では「深山大沢」において志の高い人物を生み出すことが求められている。本プロジェクトは、新島の「深山大沢」に託した願いを受けとめ、それを現代的文脈の中でネクスト「深山大沢」(様々な個性を生かし育む、多様性に満ちた環境)として再構築する。そして、それをSDGsの課題解決のための文理融合の共通プラットフォームとして展開していく。
 本学が進める「次の環境」協創コースでは、フューチャーデザイン演習を中心に未来社会の展望や課題を論じてきた。その成果を用い、ネクスト「深山大沢」の理念のもとに議論を重ね、よりよい未来社会の実現のために次の三つの柱を立てた(それぞれの内部構成も議論済み)。(1)「深山大沢」メタバース社会、(2)「深山大沢」AI・ロボット共生、(3)「深山大沢」食・エネルギー革命。これらはSDGsが設定する2030年より、はるかに遠い未来を視野に入れたものであるが、単に未来社会を「フォーキャスティング」するだけでなく、望ましい未来社会像から「バックキャスティング」することにより、SDGsに関連する、現代の我々が負うべき課題(倫理的責任)をも統合的に示している。
 SDGsにおける「4. 教育」に関して本プロジェクトでは、「次の環境」協創コースと連携しながら、地域に根ざしたカーボンニュートラルマネジメント人材の育成のために大学、企業、地域を連携させるハブとしてネクスト「深山大沢」を構想している。その理念の骨格の一つは、自然(生物を含む)・人間・人工物それぞれの多様性を高次元・高解像度でつなぐ「コネクティッド・ダイバーシティ(Connected Diversities)」である。予期せぬ発見の種(serendipity)を胚胎する豊穣な多様性こそが、未来社会に責任を持つ志の高い人物を生み出すことになる。企業人に対しては、カーボンニュートラルのための「リカレント教育」となり、その先駆的モデルの構築を目的とする。
 SDGsにおける「7. エネルギー」に対し、本プロジェクトは「リアルなカーボンリサイクル技術を中核とするエネルギー革命」と「再生可能エネルギーの地産地消による地域活性化」の見取り図を示すことを目的とする。また、SDGsにおける「13. 気候変動」に対しては、気候変動の問題を「自分ごと」として受けとめるために「新しいコモンズ(社会的関係を育む共有資源)の形成」と「世代を超えてワン・プラネットの居住者である責任を喚起する世代間倫理の構築」を目的とする。
 未来へのビジョンと責任、SDGsへの貢献が、教育と研究開発の間で高次の循環を生み出すことを本プロジェクトは示すことになる。またその際、それぞれの課題を統合的につなぎとめるのが「良心」(conscienceの原義は「共に知る」)である。本プロジェクトでは伝統的な良心概念にとどまることなく、SDGsの課題解決のために、良心を概念拡張し、新たな実践の力とする。未来世代と「共に知る」、大地と「共に知る」、人工物(AI・ロボット)と「共に知る」ことにより、これまでになかった「良心」の可能性を開示していく。


【研究実施計画】

 研究会(対面とメタバース形式)を定期的に行い(月1回程度)、その成果を公開シンポジウムで発表する(年2、3回)。産官学および地域とのネットワークを強化していくために必要な会合を開催する。動画による発信を積極的に行う。年度末に報告書をまとめ、将来の刊行のための準備とする。
 本プロジェクトは「次の環境」協創コースの関係者がコアメンバーとなっており、上述のSDGsの三つの目標に即して、役割分担や協力体制はできている。良心学研究センターとも連携し、学内から幅広い知見を得ることができるようにする。また、サイエンスコミュニケーションを重視する。


【研究終了後の計画】

 本プロジェクトは、SDGsの「4. 教育」「7. エネルギー」「13. 気候変動」の三つの目標を中心に、SDGsの目標と理念全体に対し、未来デザイン(ネクスト「深山大沢」)に基づいた斬新なアプローチを示し、その目標を担う人材育成の先駆的モデルを構築する。成果はウェブサイト、動画、報告書、シンポジウムなど多様なチャンネルを通じて発信し、社会に対し、SDGsへの新たな関心を喚起する。本プロジェクトは、研究成果を「次の環境」協創コース(教育プログラム)にフィードバックし、研究と教育、産官学の高次の循環の中でさらに発展していくことが期待される。